赤ちゃんが誕生し、慌ただしくも愛おしい育児休業の日々を過ごす中で、勤務先から届く「年末調整」の書類一式。給与がストップして育児休業給付金を受け取っている最中、「そもそも働いていないのに提出が必要なのか」「給付金の金額はどこに書けばいいのか」と頭を抱えてしまう方は少なくありません。
年末調整の仕組みを正しく把握していないと、本来受けられるはずの税金控除を見逃してしまったり、不要な確定申告の手間が発生したりするリスクがあります。育児休業給付金の正しい税務上の位置づけをはじめ、自身の各種申告書の書き方や配偶者側の年末調整での控除申請まで、2026年最新の実務ポイントをわかりやすく解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:育児休業給付金は法律上「非課税所得」であり、年末調整の書類に収入として記入してはいけない。
- 要点2:育休中で給与が少ない・ゼロの年は、配偶者(夫など)の年末調整で「配偶者控除」「配偶者特別控除」を受けられる可能性が極めて高い。
- 要点3:会社から書類が届いたら「提出しない」はNG。提出することで払いすぎた源泉徴収税の還付や翌年の住民税手続きがスムーズになる。
【基本ルール】育休中でも年末調整は必要?提出しないとどうなるかを解説
「今年は育休でほとんど給料をもらっていないから、年末調整は出さなくていいのでは」と考えがちですが、原則として会社に在籍している限り、育休中であっても年末調整の書類は提出する必要があります。
提出が必要となる主な理由は次の3点です。
第1に、年の途中で産休・育休に入った場合、それまでに支払われた給与から源泉徴収された所得税が手元に戻る(還付される)可能性があるためです。毎月の給与から天引きされる所得税は「1年間同じペースで給与を受け取る」前提で概算計算されています。年の途中で休業に入ると年間所得が大幅に下がるため、税金を納めすぎている状態になり、年末調整を行うことで還付金が発生します。
第2に、翌年度の「住民税」の決定手続きをスムーズに進めるためです。年末調整のデータは自治体へ送られ、翌年6月からの住民税計算の基礎となります。
第3に、翌年分の「扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出しておかなければ、復職後の給料にかかる源泉徴収税額が一番高い区分(乙欄)で引かれてしまうためです。
もし書類を提出しないとどうなるのでしょうか。会社で税額の精算が完了しないため、払いすぎた税金の還付を受け取るには、翌年2月〜3月に自分自身で税務署へ確定申告を行わなければならなくなります。育児で多忙な時期に余計な手続きを増やさないためにも、会社から指定された期日までにしっかり提出しましょう。
最大の落とし穴!育児休業給付金は「非課税」で年収に書かない鉄則
育休中の年末調整で最も多くの人が勘違いしやすいのが、雇用保険から支給される「育児休業給付金」や「出生時育児休業給付金(産後パパ育休)」、健康保険から支給される「出産手当金」「出産育児一時金」の取り扱いです。
結論から言うと、これらの給付金・手当金はすべて非課税所得です。所得税も住民税も一切かかりません。
そのため、年末調整の書類にある「本年中の所得の見積額」や「収入金額」の欄に、育児休業給付金の金額を記入してはいけません。記入してしまうと、本来は非課税である給付金が課税対象の給与として誤認され、税額が高く計算されたり、受けられるはずの配偶者控除が外れてしまったりする大きな不利益を被ります。
計算時に合算するのは、あくまで「その年の1月1日から12月31日までに勤務先から実際に支給された給与・賞与の総支給額(額面)」のみです。年初から1年間を通して完全に休業しており、給与の支払いが一切なかった場合は「給与収入:0円」「所得金額:0円」となります。
【書類別】育休中の年末調整書類の書き方と具体的な記入例
年末調整で勤務先から渡される主要な書類について、育休中における具体的な書き方を整理します。
1. 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
自身の所得状況を会社に報告し、基礎控除や配偶者控除を適用するための重要書類です。
【本人の基礎控除申告書欄の書き方】
・1月1日〜12月31日までに給与受給がある場合:1月〜休業前までに会社から支払われた給与・賞与の総支給額(交通費等の非課税手当を除く)を「収入金額」に記入し、給与所得控除を差し引いた額を「所得金額」に記入します。
・1年間完全に休業し給与が一切ない場合:収入金額・所得金額ともに「0円」と記入します。
2. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
翌年分の給与計算のベースとなる書類です。氏名、生年月日、現住所などを記入し、控除対象となる扶養親族がいる場合はその情報を記載します。子どもをどちらの扶養に入れるか(一般的には所得の高い配偶者側の扶養に入れるケースが多い)を決めたうえで記入します。
3. 給与所得者の保険料控除申告書
育休中であっても、自分名義で支払っている生命保険料や地震保険料がある場合は控除対象になります。保険会社から秋頃に届く「控除証明書」を添付し、申告書に契約内容と支払保険料を転記します。
ただし、その年の自身の所得税がすでにゼロになっている場合、本人の年末調整で保険料控除を適用しても税金が戻ってこないケースがあります。その場合の賢い対処法については後述します。
夫側の年末調整はどう書く?配偶者控除・配偶者特別控除の適用条件
妻が育休に入って年収が下がった、またはゼロになった年に、世帯単位で最も大きな節税メリットを生むのが夫側の年末調整における「配偶者控除」または「配偶者特別控除」の申請です(※妻が夫を扶養する場合も同様の仕組みです)。
前述の通り、育児休業給付金は非課税のため、配偶者の年間所得計算には1円も参入しません。妻の1月〜12月の「給与収入」だけで判定します。
【控除判定の基準(妻の給与年収ベース)】
・給与年収が103万円以下(所得48万円以下、または無収入):夫の年末調整で「配偶者控除」が適用されます(夫の年収上限あり)。満額で38万円の所得控除が受けられます。
・給与年収が103万円超〜201.6万円未満:「配偶者特別控除」の対象となり、年収額に応じて段階的な控除が適用されます。
【夫の「配偶者控除等申告書」の書き方】
夫が会社に提出する申告書の「配偶者」の欄に、妻の氏名や個人番号とともに、妻のその年の「給与収入見積額」とそこから導き出される「所得金額」を記入します。育休中で給与支給がなければ「収入金額:0円」「所得金額:0円」と記載するだけで、夫側の課税所得が圧縮され、夫の12月給与で大きな還付金を受け取ることができます。
産休・育休中の保険料控除や住宅ローン控除の注意点と還付金の振込時期
育休中の年末調整では、各種控除の性質と還付金の発生タイミングについても押さえておく必要があります。
保険料控除の「名義」と「支払い者」
育休中で妻自身の所得税がゼロ(または非課税枠内)の場合、妻の年末調整で生命保険料控除を出しても控除しきれず無駄になってしまうことがあります。しかし、「妻名義の生命保険料を、夫の口座(家計を共にする口座)から支払っている」実態がある場合は、夫側の年末調整で保険料控除申告書に記載して夫の控除として適用することが可能です。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の盲点
住宅ローン控除は「納めるべき所得税(および一部の住民税)から直接マイナスする」税額控除です。育休中でそもそも支払う所得税が0円であれば、所得税からの控除は行われません。住民税からの控除にも上限があるため、育休中の単独名義やペアローンを組んでいる世帯は、事前に控除可能額を確認しておきましょう。
年末調整の還付金はいつ振り込まれる?
年末調整による還付金は、一般的に12月の給与支給日、または1月の給与支給日に給与口座へ振り込まれます。育休中で給与がゼロの月であっても、還付金が発生している場合はその差額分だけが指定口座へ入金されるか、会社から別途精算方法の連絡が入ります。
育休復帰後の年末調整手続きと損をしないためのチェックリスト
育児休業を終えて職場復帰を果たした後の年末調整についても、注意すべき手続きがあります。
年度の途中で復帰した場合、その年に支払われた給与総額に応じて課税関係が再計算されます。復帰した年は勤務月数が少なく年収が低めになることが多いため、引き続き配偶者控除や配偶者特別控除の適用対象になるかどうかのシミュレーションが欠かせません。
スムーズに手続きを進めるための最終確認チェックリストは以下の通りです。
☑ 育児休業給付金・出産手当金などの非課税所得を収入欄から完全に除外したか
☑ 休業前の1月以降に支払われた給与・賞与の総支給額を正しく集計したか
☑ 配偶者(夫)側の年末調整で「配偶者控除・配偶者特別控除」の申請書類を漏れなく記入したか
☑ 子どもの扶養親族設定を夫婦どちらの申告書にするか確定させたか
☑ 提出期限を勤務先の人事・総務担当窓口へ確認し、期日までに郵送・Web提出を完了させたか
【育休中の年末調整の書き方】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:1年間まるまる育休で会社からの給与が1円もありません。それでも年末調整の書類は出すべきですか?
A1:はい、提出が必要です。給与収入を「0円」として申告することで、会社側が翌年の住民税や扶養に関する正しい給与支払報告書を自治体に提出できます。また、翌年分の扶養控除等申告書を提出しておくことで、復職後の給与から過大な税金が引かれるのを防ぐ役割もあります。
Q2:育児休業給付金を受け取っていても、夫の税金上の扶養(配偶者控除)に入れますか?
A2:入れます。育児休業給付金は所得税法上、非課税所得と定められているため、いくら支給されていても税法上の所得にはカウントされません。休業前を含めた1年間の給与収入が103万円以下であれば、問題なく配偶者控除の対象となります。
Q3:産休中・育休中に自分で支払った国民年金保険料や任意継続の健康保険料は控除できますか?
A3:社会保険料控除の対象になります。実際にその保険料を支払った人の年末調整で申告できるため、妻本人の所得が少なく控除しきれない場合は、同一生計の夫が支払った(負担した)ものとして夫側の年末調整で申告するのが賢い選択です。
まとめ:正しい申告で手取りを守る!育休中の年末調整で押さえるべきポイント
育休中の年末調整は、「給付金は非課税のため書類に一切書かない」「夫婦で控除を最適化する」という2大原則を理解しておくことで、迷わず正確に完了させることができます。
日々の育児で慌ただしい時期だからこそ、会社からの案内書類を放置せず、期日通りに提出を済ませておきましょう。仕組みを正しく味方につけることが、家計の手取りを守り、安心して復帰を迎えるための大切なステップとなります。 (出典: 育休 中 年末 調整 書き方(Yahoo!ニュース))