広島県のシンボルとして日本全国、さらには海外からの観光客にも深く浸透している「モミジ」。しかし、観光名所やお土産のパッケージで日常的に目にする一方で、「なぜ花ではなく樹木であるはずのモミジが県花なのか」「県木との違いは何なのか」という疑問を持つ人は少なくありません。
広島県におけるモミジは、単なる植物の枠を超え、戦後の復興期から地域アイデンティティの中核を担い続けてきた歴史的背景を持っています。本稿では、広島の県花が「モミジ」に指定された経緯や選定理由の真相を紐解くとともに、県木・県鳥との関係性、さらに宮島をはじめとする名所の最新見頃データまでを網羅的に解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:広島県の県花「モミジ」は、1954(昭和29)年にNHKが提唱した「郷土の花」公募運動を契機に選ばれ、県民の圧倒的な支持を受けて定着した。
- 要点2:広島県は「県花」と「県木」の両方にモミジ(ヤマモミジ・イロハモミジ等)を指定しており、全国的にも同一植物が重複指定されている極めて珍しい自治体である。
- 要点3:名所である「宮島・紅葉谷公園」の見頃は例年11月中旬から下旬、渓谷美を誇る「三段峡」「帝釈峡」は10月下旬から11月上旬にかけてピークを迎える。
【制定の真相】広島の県花が「モミジ」に選ばれた決定的な理由と歴史
「広島の県花はいつ決まったのか」という問いに対し、公式な記録を辿ると1954(昭和29)年3月に行われたNHK主催の「郷土の花」選定事業に行き着きます。当時、戦後復興の途上にあった日本各地で地域を象徴するシンボルを制定する機運が高まり、広島県民への一般公募と選考委員会によって「モミジ」が県花として選定されました。
一般的に「花」といえば桜やツツジのような華やかな花弁を連想しがちですが、植物学的にカエデ科(現ムクロジ科カエデ属)に属するモミジも、4月から5月にかけて赤褐色から黄緑色の可憐な小花を咲かせます。広島県内には古くから安芸の宮島をはじめ、自然豊かな山間部に自生するモミジの景勝地が数多く存在しており、「広島を代表する美の象徴」として県民の心に深く根づいていたことが、花卉(かき)類を差し置いてモミジが選ばれた決定的な理由です。
その後、1966(昭和41)年9月12日には、自治省(現総務省)の呼びかけによって全国一斉に「県木」の制定が進められました。この際、広島県は県民公募を実施し、実に有効応募総数の約60%を超える圧倒的な支持を集めて「モミジ」を県木にも正式指定しました。これにより、広島県は花と木の両方でモミジを公式シンボルに掲げる独自の歩みを確立したのです。
広島県のシンボル徹底解剖|県花・県木・県鳥の違いと一覧比較
広島県の公式シンボルには、県花・県木であるモミジのほかに、瀬戸内海の豊かな海を象徴する「県鳥」や「県魚」が定められています。それぞれの指定背景と役割を整理したデータは以下の通りです。
| シンボル区分 | 指定名称・指定年月日 | 特徴・選定理由のデータ | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| 県花(けんか) | モミジ 1954(昭和29)年公募選定 | 春に咲く控えめな花と秋の鮮やかな紅葉。県民推薦第1位。 | 花の美しさだけでなく、地域文化との結びつきが評価された好例。 |
| 県木(けんぼく) | モミジ 1966(昭和41)年9月12日指定 | 公募応募総数中6割以上の得票。県旗や県章のデザイン基盤。 | 県花と重複指定されたことで、ブランド価値が県内外に強固に定着。 |
| 県鳥(けんちょう) | アビ 1964(昭和39)年7月13日指定 | 瀬戸内海に飛来する渡り鳥。「アビ渡来群游海面」は国指定天然記念物。 | 伝統的な「アビ漁」など瀬戸内の漁業文化と自然環境を象徴。 |
| 県魚(けんぎょ) | カキ(広島かき) 1990(平成2)年9月21日指定 | 全国シェアの約6割を誇る生産量。室町時代から続く養殖の歴史。 | 名実ともに広島の食文化を牽引する絶対的な地域資源。 |
一般に知られていない盲点と誤解|もみじ饅頭の由来と植物学的真相
「もみじ饅頭があるからモミジが県花になった」という言説がネット上で見受けられますが、これは歴史的な因果関係が逆、あるいは誤解に基づいています。
銘菓「もみじ饅頭」の起源は明治時代後期にさかのぼります。明治の元勲・伊藤博文が宮島の紅葉谷にある茶屋を訪れた際、給仕をした茶屋の娘の手を見て「なんと可愛らしい、紅葉のような手だろう。焼いて食べたら美味しかろう」と冗談を言った逸話をヒントに、紅葉谷公園の旅館の依頼を受けた和菓子職人・高津常助氏が1906(明治39)年に考案したと伝えられています。つまり、名菓としてのモミジ饅頭の歴史が先行し、その知名度と宮島の美景が県民意識に定着していたからこそ、昭和期の県花・県木指定においてモミジが圧倒的な支持を得たというのが正確な歴史の文脈です。
また、植物学的な観点において「モミジ」という独立した科目は存在せず、植物分類上はすべて「カエデ(槭樹)」に属します。広島県内に広く自生しているのは主にヤマモミジ、イロハモミジ、オオモミジです。特に県北部の山岳地帯に多く見られるヤマモミジは、葉の切れ込みが深く、寒暖差によって深紅から橙色、黄色へと重層的なグラデーションを見せるのが大きな特徴です。
【実態検証】現地取材で見えた広島の紅葉名所3選と見頃時期
広島県内には全国屈指の紅葉スポットが点在しています。近年の気候推移を踏まえた主要名所の特徴と見頃の傾向を分析します。
1. 宮島・紅葉谷公園(廿日市市)|世界遺産の島を彩る約700本の紅葉
宮島桟橋から徒歩約20分、弥山(みせん)の麓に広がる紅葉谷公園には、約700本を超えるイロハモミジやヤマモミジが群生しています。朱塗りの「紅葉橋」と深紅のモミジが織りなすコントラストは圧巻です。
【見頃の目安】11月中旬〜11月下旬
現地では11月中旬の週末に観光客が集中し、宮島口フェリーおよび島内の参道が終日混雑します。早朝(午前8時台以前)のフェリーを利用して入島することで、人混みを避けた静寂のなかで鮮やかな紅葉美を堪能できます。
2. 三段峡(安芸太田町)|西日本有数の峡谷美とダイナミックな原生林
国の特別名勝に指定されている三段峡は、全長約16kmに及ぶ大峡谷です。黒淵や猿飛といった切り立った断崖絶壁に自生するヤマモミジやケヤキ、トチノキが色づき、エメラルドグリーンの水面との対比が際立ちます。
【見頃の目安】10月下旬〜11月上旬
宮島よりも標高が高く内陸に位置するため、見頃のピークは半月ほど早く訪れます。渡舟の運航状況や遊歩道の通行規制情報を事前に公式サイトで確認した上で、トレッキングに適した装備で訪れる必要があります。
3. 帝釈峡(庄原市・神石高原町)|カルスト台地を染め上げる秋の絶景
中国山地に位置する国定公園・帝釈峡は、日本百景にも選ばれる名勝です。天然の巨大石橋「雄橋(おんばし)」周辺や、遊覧船が運航する「神龍湖(しんりゅうこ)」周辺の紅葉が見どころです。
【見頃の目安】10月下旬〜11月中旬
神龍湖の遊覧船から見上げる断崖のモミジは壮観です。湖畔の散策路は起伏が比較的穏やかで、ファミリー層やシニア層の観光にも適しています。
【プロの結論】旅の満足度を最大化する訪問計画と推奨基準
広島の県花・モミジを体感する旅を計画するにあたり、旅行者の目的や同行者の属性に応じた適切な選択が求められます。現地取材と地理的特性に基づく客観的な判断基準は以下の通りです。
◎ おすすめできる旅行スタイル
- 歴史文化と景観をワンストップで満喫したい層:「宮島・紅葉谷公園」が最適です。厳島神社の参拝、もみじ饅頭の食べ比べ、ライトアップされた夜間散策など、極めて高い観光体験の密度を得られます。
- 本格的な自然美とアクティビティを求める層:「三段峡」または「帝釈峡」が適しています。澄んだ空気とダイナミックな地形、澄み切った渓流とともに紅葉のグラデーションを深く味わえます。
▲ 慎重に計画・準備すべきケース
- 混雑を避けたいファミリー・高齢者連れ:11月中旬の休日に宮島へ日帰りで訪れる計画は避けるのが賢明です。フェリー待ち時間や歩行距離が長くなるため、平日午前中の訪問か、あるいは「縮景園(広島市中区)」など市街地至近の名所への変更を推奨します。
- 春・初夏の新緑シーズンを見逃している層:モミジは秋だけでなく、4月から6月にかけての「青もみじ(新緑)」も格別の風情があります。混雑率が下がり、可憐なモミジの花や若葉のみずみずしさを静かに鑑賞できる穴場の時期です。
【広島 の 県 花】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:広島県の県花と県木が両方とも「モミジ」なのはなぜですか?
A1:1954年にNHKの公募で県花として選出された後、1966年の県木制定時にも県民アンケートで6割以上の票を集めたためです。宮島をはじめ県内に自生するモミジが広く県民に愛されており、同一の植物が選ばれました。
Q2:モミジに咲く花はどのような見た目ですか?いつ見られますか?
A2:モミジの花は4月中旬から5月上旬にかけて開花します。直径約5ミリ前後の赤褐色や黄緑色の小さな花が房状に垂れ下がって咲き、秋の鮮やかな葉とは対照的な奥ゆかしい可憐さがあります。
Q3:宮島のもみじ谷公園の紅葉ライトアップは実施されていますか?
A3:例年、紅葉の見頃を迎える11月上旬から下旬にかけて、紅葉谷公園周辺で日没から21時頃までライトアップが実施されます。最新の日程や点灯時間は一般社団法人宮島観光協会の公式アナウンスをご確認ください。
Q4:広島県章(マーク)もモミジがモチーフになっているのですか?
A4:広島県の県章(1956年制定)は、カタカナの「ヒ」の字を円形に図案化して県民の和と飛躍を表したものです。一方で、県旗のデザインや観光PR用の各種シンボルマーク、県警のシンボルマスコット「メイプルくん」などにはモミジが直接取り入れられています。
まとめ:広島の誇るモミジ文化を深く味わうために
広島の県花「モミジ」は、単なる植物の選定にとどまらず、宮島の歴史、伝統菓子、瀬戸内の自然美、そして戦後復興を遂げた県民の郷土愛が一体となって定着したシンボルです。
秋の燃えるような紅葉はもちろん、春の新緑と小花、夏のみずみずしい木陰など、四季折々の表情に触れることで、広島という土地が育んできた文化的魅力の深さをより立体的に体感できるはずです。現地を訪れる際は、開花・色づきの推移を確認した上で、ぜひゆとりを持ったスケジュールでその美しさを堪能してください。 (出典: 広島 の 県 花(Yahoo!ニュース))