学校行事や音楽発表会、中学校の合唱祭において、会場全体を一瞬で明るいエネルギーで包み込む楽曲として不動の地位を築いているのが、ロックバンドWANIMAが手がけた『やってみよう』の合唱版です。イギリス民謡『ピクニック』を原曲とする親しみやすいメロディに、疾走感あふれるロックサウンドと前向きなメッセージが融合したこの曲は、子どもたちだけでなく聴衆の保護者や教職員の心をも強く揺さぶります。
しかし、いざ合唱曲として取り組むとなると、「テンポが速くて言葉が滑ってしまう」「同声2部と混声3部のどちらの楽譜を選ぶべきか」「アップテンポなピアノ伴奏をどう弾きこなすか」といった指導現場特有の課題に直面することも少なくありません。教育現場のリアルな実践データと音楽指導のプロの知見をもとに、学年ごとの選曲基準からパート練習・伴奏のコツ、指導案の要点までを徹底解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:失敗を肯定するポジティブな歌詞と軽快なビートが、児童・生徒の心理的ハードルを下げ、合唱祭で圧倒的な一体感と高揚感を生み出す。
- 要点2:小学校高学年なら「同声2部」、中学校合唱祭なら「混声3部」が基本。原曲のノリを活かしつつ、シンコペーションの音取りと正確な発音指導が成功の分かれ道となる。
- 要点3:ピアノ伴奏はリズムの推進力を担うため、左手のベースラインを安定させることが最重要。模範演奏音源を活用した効率的なパート練習が本番の完成度を劇的に高める。
【なぜ大人気?】合唱祭や学校行事で「やってみよう」が選ばれる理由と歌詞の意味
音楽教育の現場や合唱コンクールにおいて、長年親しまれてきたクラシカルな合唱曲に加え、近年はポップス合唱曲の需要が極めて高くなっています。その中でもWANIMAの合唱アレンジである『やってみよう』は、小学校の運動会や音楽会、中学校の合唱祭、さらには卒業前を送る会に至るまで、幅広いシーンで選曲率トップクラスを維持しています。
最大の魅力は、歌詞に込められた圧倒的な肯定感とメッセージ性にあります。「正しいことよりも楽しいこと」「失敗も思い出」というフレーズは、日頃から成績や同調圧力にさらされがちな現代の子どもたちの心をダイレクトに解きほぐします。原曲である童謡『ピクニック』のメロディラインを巧みに引用しているため、導入段階での敷居が非常に低く、歌うことへの苦手意識を持つ生徒でも自然と口ずさめる親しみやすさを備えています。
合唱指導の現場取材によると、選曲理由として「普段はおとなしい生徒が主体的に声を出すようになった」「クラス全員が笑顔で練習に参加できるようになった」という声が多く寄せられています。真面目に歌い上げる合唱とは一線を画し、全身で音楽を楽しむ体験を共有できる点が、学校行事のキラーチューンとして定着した決定打と言えます。
同声2部・混声3部の楽譜選びと合唱難易度の比較【編成別の特徴】
『やってみよう』を合唱で披露する際、最も重要な第一歩がクラスの実力や学年に適した合唱楽譜の選定です。出版各社(ウィンズスコア、エレキベースや打楽器を含むポップス合唱版など)から多彩なアレンジが出版されており、それぞれの難易度や音域設定が大きく異なります。
小学校高学年(5年生・6年生)を対象とする場合は、主旋律とハーモニーの役割が明確な同声2部合唱が王道です。高音部の伸びやかさを活かしつつ、下声部がつられないように音取りを工夫することで、短期間でもクオリティの高い演奏に仕上がります。一方、中学校の合唱祭でクラスの総合力を競う場合は、男声パートが加わる混声3部合唱アレンジが真価を発揮します。男声が力強いビートと低音の厚みを支え、女声ソプラノ・アルトが華やかなメロディを重ねることで、迫力ある立体的なサウンドが完成します。
| 編成・楽譜タイプ | 対象学年・難易度目安 | パート構成・特徴 | 編集部の見解・指導ポイント |
|---|---|---|---|
| 同声2部合唱 | 小学校5〜6年 難易度:★★☆☆☆ | 主旋律 / 低音ハモリ 音域が狭く歌いやすい | 下声部につられやすいため、早い段階で独立したハーモニー感覚を養うことが成功の鍵。手拍子導入も効果的。 |
| 混声3部合唱 | 中学校1〜3年 難易度:★★★☆☆ | ソプラノ / アルト / 男声 リズムと低音の推進力 | 変声期の男声が歌いやすい音域設定を選ぶのが必須。男声のノリが全体のグルーヴを左右する。 |
| 同声3部 / 合同演奏 | 中・高校生・合唱部 難易度:★★★★☆ | ソプラノ / メゾ / アルト 緻密な和声と掛け合い | 部活動や有志演奏向け。速いテンポの中での正確なピッチと透明感あるハーモニーの構築が求められる。 |
【実態検証】パート練習・音取りを最速で仕上げる現場のアプローチ
アップテンポなポップス合唱において、指導者が最も頭を抱えるのがパート練習と音取りの効率化です。生徒が「原曲のノリ」だけで歌ってしまうと、ピッチがぶら下がり、アンサンブルが崩壊するリスクを孕んでいます。
教育現場で実践されている効果的なアプローチとして、音源や模範演奏の徹底活用が挙げられます。パート別の音取り音源をタブレット端末や音楽配信プラットフォームで個別に聴き込ませることで、授業内の全体練習時間を「合わせ」や「表現指導」に集中させることができます。
特にアルトや男声パートなどの内声・低音パートは、主旋律のキャッチーさに引っ張られやすくなります。練習初期の段階では、あえてテンポをBPM=80〜90程度まで落としたスロー練習を行い、裏拍のタイミングや休符の長さを体感させることが極めて重要です。手拍子でバックビート(2拍目・4拍目)を感じながら歌うトレーニングを取り入れることで、リズムの縦のラインが驚くほど揃うようになります。
一般に知られていない盲点と伴奏・歌唱指導の誤解
『やってみよう』を指導・演奏する際、多くの学校が陥りがちな典型的なミスが2点存在します。それは「テンポの暴走」と「ピアノ伴奏のオーバーストローク」です。
第一の盲点は、曲の勢いに任せてテンポがどんどん走ってしまう現象です。本番の高揚感も相まって、冒頭よりもサビでテンポが大幅に加速し、子音の発音が追いつかなくなって歌詞が聞き取れない雑な演奏になってしまうケースが散見されます。歌唱指導においては、「速く歌う」のではなく「言葉のアタック(子音)をハッキリ置いていく」意識を徹底させることが肝要です。
第二の盲点は、ピアノ伴奏のコツとペダリングの誤用です。ロック調の楽曲であるため、ピアニストはドラムとベースの役割を同時にこなさなければなりません。ペダルを踏み込みすぎると音が濁り、リズムのキレが完全に失われてしまいます。左手はスタッカートを効かせてビートを刻み、右手はコードを歯切れよく刻むドライなタッチを意識することで、合唱全体の躍動感を最大限に引き出す伴奏が実現します。
【指導案のポイント】クラス全員を巻き込み圧倒的な一体感を生み出す秘訣
音楽教育や集団心理学の視点から見ると、合唱曲『やってみよう』は「集団効力感(Collective Efficacy)」を高めるための格好の教材となります。合唱が苦手な生徒や、声変わりに悩む思春期の生徒に対して、どのようにアプローチすべきかをまとめた指導案のポイントを解説します。
導入授業では、歌詞カードを配布して「歌詞のどの部分に一番共感するか」を問いかける対話型のワークを組み込むのが効果的です。「失敗してもいいから挑戦する」という楽曲のテーマそのものをクラスの目標とリンクさせることで、間違えることを恐れずに声を出す「心理的安全性」の高い環境が教室内に醸成されます。
【プロの結論】おすすめできるクラス・慎重になるべき編成の判断基準
本曲の採用にあたっては、クラスの成熟度や人員構成を見極める明確な判断基準を持つことが推奨されます。
- 向いているクラス・編成:
- クラスの一体感やポジティブなエネルギーを前面に出したい集団
- 男子生徒の声量が控えめで、明るい曲調で歌唱へのモチベーションを引き出したい場合
- 手拍子や身体表現(ステップ・振り付け)を交えたステージングを目指す学年
- 慎重になるべきケース:
- ピアノ伴奏者の確保が難しく、速いパッセージの演奏に不安がある場合
- 厳格なクラシック声楽の響きや、重厚な多声部ポリフォニーの審査を重視するコンクール
- 子音の発音や母音の統一といった基礎的な合唱スキルの定着が著しく遅れている段階
【やってみよう 合唱】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:小学校高学年で挑戦する場合、ピアノ伴奏の難易度はどれくらいですか?
A1:アレンジによって異なりますが、中級レベル(ブルグミュラー後半〜ソナチネ程度)の技術が求められます。特にテンポを一定に保ちながら16分音符の跳ねるリズムを左手で刻み続けるスタミナとリズム感が重要です。伴奏者が苦戦する場合は、手拍子や簡易打楽器を併用して左手の音数を間引いた簡易アレンジを採用するのも有効な手段です。
Q2:中学校の合唱祭で男子生徒が照れて歌ってくれない時の対処法は?
A2:原曲が親しみやすいWANIMAのロックである点を活かし、男声を「バンドのベース&ドラム隊」として位置付ける声かけが非常に有効です。また、サビ前の掛け声や手拍子など、身体を使ったアクションを男声リードで担当させることで、照れを払拭し積極的な参加を引き出せます。
Q3:パート練習用の模範音源や楽譜はどこで入手できますか?
A3:教育芸術社やウィンズスコア(エレパモ・合唱ピースシリーズ)などの楽譜専門出版社から、模範演奏CD付き楽譜やパート別練習用音源が公式にリリースされています。また、YouTube等の公式教育チャンネルでも質の高い模範演奏動画が多数公開されているため、授業用端末での個別視聴に活用できます。
まとめ:心躍る「やってみよう」で最高のステージを作り上げるために
合唱曲『やってみよう』は、単なるキャッチーな流行歌にとどまらず、歌う側と聴く側の双方に勇気と前進するエネルギーを与える稀有な名曲です。適切な楽譜の選択、リズムと発音にフォーカスしたパート練習、そしてキレのあるピアノ伴奏が揃ったとき、体育館やホールは感動的な熱気と笑顔に包まれます。
失敗を恐れず、仲間とともに新しい一歩を踏み出す——そんな楽曲本来のメッセージを胸に、クラス全員で最高のハーモニーと唯一無二のステージを作り上げてください。 (出典: やっ て みよう 合唱(Yahoo!ニュース))